趣味の五月雨

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釣りの記事から一人暮らしの購入録へと変貌しつつある謎ブログ

生まれて初めての聖地巡礼旅行 あの夏で待ってる

今までの人生で見たアニメの中で3本の名作を上げるとしたら、私は1つ目にまずこの作品をあげるでしょう。

 

あの夏で待ってる」  

あの夏で待ってる Blu-ray BOX

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  • 発売日: 2016/09/07
  • メディア: Blu-ray
 

 

作品概要 

ざっくりとした内容は以下の通りです。

 

高校生活を目的もなく過ごす主人公霧島海人のもとに、謎の転校生貴月イチカが現れます。実は地球外からやってきたイチカはその素性を隠しつつも、ひょんなことから海人との同棲生活が始まります。

 

そして高校生という限られた時間の中で何かをしたいという想いを抱えていた海人はこれを機にイチカや友人と共に映画撮影を始める。そんな夏の出来事を描いた作品です。

 

SFっぽさがありつつも、やはり作品の中核に据えられているのは複雑に揺れ動く恋模様でしょう。もしこの作品を知らずとも、ネットに精通している人は谷川柑菜(青い髪の子)を一目は見たことがあるのではないでしょうか。

 

好きなところ

 私が初めてこの作品を視聴したのは高校生の頃でした。思えばこの作品には心惹かれる部分が多かったように感じます。絶妙な間を持ったモノローグや独特の間。

 

中でも一番大好きなシーンは4話後半、海人とイチカから交互に語られるナレーション部分です。

海人)  夏休みが始まろうとしていた。 

イチカ)  一生忘れられることのない

海人)  忘れられない夏

イチカ)  きっとそれは

海人)   みんなも同じだったと思う

イチカ)  喜びや悲しみ痛み

海人)   そういうの全部ひっくるめて

イチカ)  たった一度の

 

海人・イチカ)あの夏が 始まる ←ビードロ模様が流れる

もうこのナレーションを聞くだけで泣いてしまうレベルです。哲朗や柑菜、美桜を巻き込んだ恋愛模様が本格的に動きだす重要な場面です。

 

謎の先輩と過ごすひと夏のアバンチュール。全力で好きな人に向き合うその姿勢。青春を全力で駆け抜けていったキャラクター達。夏待ちに熱中するのはそう多くの時間はかかりませんでした。

 

そしてその思いが高じて初めての聖地巡礼の旅を決意することになったのです。

小諸旅行

初めての一人旅

そして大学2年の時初めて「あの夏で待ってる」の舞台に訪れることになります。場所は長野県小諸市長野新幹線ができる前は長野の玄関口として栄えていた町です。

 

人生で初めての一人旅。青春18切符を握りしめてひたすら電車に乗り続けました。慣れない土地への旅のため、電車にのり間違えて2時間の待ちぼうけをくらったり、危うく野宿になりそうになったり、見知らぬ土地で携帯の充電が切れたり。今思えば散々な目にあった旅行でした。

 

当時の旅行記にはその思い出がルーズリーフ7枚分、隙間なく文字がびっしりとつづられていました。当時の私にとってそれだけこの聖地巡礼で見たもの、感じたもの、経験したものが新鮮で思い出深いものであったことがうかがえます。

 

もう一つの目的

こうして記事を書いていて思い出したことがあります。私がなぜ聖地巡礼を始めようと思ったのか。それは小諸市で開催される「ドカンショ」へ参加することが目的でした。

 

ドカンショとは小諸市で例年8月に開催される小諸市民まつりを指します。内容としては様々な団体が「こもろドカンショ」という曲に合わせて踊りながら街を練り歩くお祭りです。

 

このお祭りでは「あの夏で待ってる」の有志で結成された「なつまち連」というのがありました。私の旅の目的はなつまち連として祭りに参加するためでした。

 

小諸駅へ到着

小諸駅への到着後は少し時間があったので市内を散策しました。小諸駅付近の道路には頭上の太陽が降り注いでいます。うだるような暑さの中でも屋台が設営され始めており、これから始まるであろう祭りの気配が漂ってました。

 

そして今でも印象に残っているのは北東にそびえた浅間山。間近に迫る山々と自然の雄大さと迫力に圧倒されていました。

 

各所をめぐる

その浅間山が一望できる場所の1つとして「みはらし庭」があります。哲郎が柑菜に告白をした場所です。あの場面が無ければ夏まちは成立しません。それほどに重要で思い出深いシーンになります。アニメで見た風景がそのまま再現されていました。

 

小諸市にはそんな聖地が随所にみられます。海人たちが映画撮影の舞台として使っていた懐古園、opで檸檬先輩が振り返る市内の交差点。どこもみてもアニメのままの風景がそこには広がっていました。

 

一番思い出深いのはやはり一話で海人とイチカが出会う西浦ダムでしょうか。駅からは急な下り坂を歩いてくるのは大変でしたが、2人は出会った初めの場所に訪れることができたのは鳥肌が立つほどの感動でした。

 

踊りの準備

市内散策を一通り終え感動しきった中、ドカンショ「なつまち連」の準備会場へと足を運びました。祭りが始まる夕暮れ時、踊りの練習を参加者全員で一緒にやりました。踊りの経験が皆無な私にも何とか覚えられて良かった。と安心したのもつかの間。

 

窓の外を見るとどんよりとした雲が空一体に広がりやがて突然の雷雨。ドカンショの開催自体が一時中止になるのではと思われた。しかし山の天気が変わりやすいことが幸い、少し時間が経った後には雲も姿を消して晴れ間が見えていました。

 

そして祭りは動き出す

無事に決行となり祭りの会場へ向かいます。会場は小諸駅に面した相生町通り。普段は交通量が多い道路でしたが祭りの時には歩行者天国に。たくさんの団体が集まる中、なつまち連も待機します。そして開始の合図とともにドカンショが始まりました。

 

1時間習った覚えたての踊りで私も町を練り歩きます。これが思いのほか楽しかった。祭りに参加するなんて経験はいままでしたことがなかったです。普段は歩道から祭りを眺めているだけ。でも今日は違います。

 

身体には大量の汗をにじませ、「なつまち連」としてドカンショを踊る。このイベントがなければ会うことすらない人が一堂に介しています。踊りの途中で入る合いの手「それ!それ!それそれそれそれ!こもろドカンショなつまち連!」と全身全霊で叫びました。

 

おかげでのどが枯れ果て全身はくたくたに。けれどもそれが全然辛くない。むしろ身体は気力で満ち溢れてました。

宴もたけなわ

日は完全に沈んで夜になっても踊り続けました。そして無機質なスピーカーが、次の1曲で終わるという事実が告げられます。いつまでも踊り続けていたいと願いながらも、残るありったけの力を振り絞って踊りました。

 

そして終了を告げるアナウンス。全身に疲労がたまりながらも踊り終えた爽快感と達成感はいつまでも覚えています。今振り返っても、このドカンショが私にとって一生忘れられない夏の経験になりました。

 

祭りのあと

そして翌日、再び小諸を散策してみると、すでにまつりの屋台は解体され昨晩の祭りの面影はなくなっていました。相変わらず頭上から太陽が降り注いでました、浴衣を着ている人々の姿はもうどこにもいませんでした。

 

相生町通りには祭りの前と同じように車両が往相して、再び日常の姿を取り戻していました。きっとこれが小諸市のいつもの風景なんだろうな。。なんて思いながら私は小諸市を離れ帰路につくのでした。

 

人生で初めての聖地巡礼旅行

こうして私にとっての夏は終わりました。初めて経験した一人旅兼聖地巡礼は予想外の経験しかなかったです。電車には乗り間違え、携帯の充電器の電池はなくなり、あてにしていた宿泊施設は満席で止まれず、ついでに帰りの電車では線路が水没しており、大幅な迂回を迫られました。当時は焦り困ったことも大変多かったですがその分記憶に深く刻まれた旅行になりました。

 

この経験があったおかげで今も毎年聖地巡礼一人旅をするようになりました。この旅行は今の私の行動様式を形作っている、そんな一つの原点なのです。

 

終わりに

昨今のコロナ事情により2021年のドカンショは中止という結果になりました。その憂さ晴らしというわけではありませんが、当時の気持ちを忘れたくなくてこの記事を書きました。

 

少しずつ小諸市の街並みも変わりアニメ放映当時の風景は失われつつあります。1話の冒頭で登場した印象的な西浦ダムは改修工事が行われたり、OPで檸檬先輩が振り返るシーンで映る建築物も姿を変えました。

 

いつまでも小諸の風景や文化は残っていないかもしれません。それでも私はあの夏に小諸で見た風景や感じた出来事を忘れないでしょう。当時の小諸旅行の写真はすでにもう1枚も残ってません。あれだけ書き溜めたルーズリーフ7枚分の日記もありません。

 

それでものどが枯れて全身がクタクタになってまで踊った経験や小諸市で見た風景の記憶は私の中に深く刻まれています。コロナが明けたら、きっとわたしはまた小諸に向かうのです。あの夏で待っている あの風景に会いに行くために。

 

2021/8/28 改稿